メイドは、ドアを開き、外を伺う。
そして、この館の主を認めて、礼を言うために声をかけた。
眠たげな声でこの館の主…線の細い少女に見える…は返事をし、
メイドのほうをやはり眠たげな目で見つめた。
主の少女は問い掛ける。「どうだった?」
メイドは答えた。「一通り、目を通しました。」
主の少女は「そう」と微笑み、「お疲れ様」とメイドを労った。
メイドは恐縮をして、改めて礼を言い、謝罪をした。
「永く掛かってしまって、申し訳ありませんでした。」
「ん、私が判れば早かったんでしょうけど。」
「いえ、それは…」メイドは少し言葉に窮した。
「ふふ、いいの。」主の少女ははにかんだように笑った。
「結果的に私自身の不得手が再認識できたわけだし。」
主の少女は小さくクツクツと笑った。
「は、はあ…」メイドはまた反応に困る。
「あ、御免ね。これじゃ当てつけみたいに聞こえるわよね。」
主の少女の笑いに少し苦笑が交じった。
「でも、皮肉ではないのよ。本当にこのことが嬉しいの。」
微笑みはそのままに、少女の声は少し真摯なものになった。
だから、メイドにも困惑はなくなって、真摯に聞く体勢に入った。