白澤叶(しらさわかなえ)は、神社住み込みの巫女だったが、
この度めでたく結婚退職をしたのだそうだ。
旦那様の苗字は叶(かのう)。
奥様の名前は叶(かなえ)。
ごく普通に見合をして、ごく普通に見合結婚をしたらしい。
ただ、まあ、結果的に彼女の名前は叶叶(かのうかなえ)に相成った。


「私宛のダイレクトメールが来ると笑えるぞ。」
「自分で言うなよ。」


3年ぶりに会った彼女は相変わらずに見えた。
マタニティドレス姿なのは少しショックだったが。


「…何ヶ月?」
「8ヶ月。」
「しかし、見合結婚なあ…。」
「うむ。見合の席ってのは案外サバを読んでもばれないもんだ。」
「読んでたのか。」
「のだ。まあ、結婚届を出すときにバレたが。」
「そこまで隠し通したのか。」
「おう。校門ですれ違った時には冷や汗ものだったこともあった。」
「在学中に見合かよ。だからサバなんて読んでたのか。」
「まあ、バレたついでに、旦那に『やあいロリコン』と言ったら寝込んだな。3日ほど。」
「かわいそうな旦那…」


まあ、そんなわけで彼女が引退した後、神社はさぞ寂れただろうと思ったのだが。



時間切れ