広大な世界を見ていると、小さな空間に落ち着きたくなる。
小さな空間に佇んでいると、広い世界へ想いを馳せたくなる。


起床したばかりの私はどちらかと言えば後者の気分で、
厚い防護壁で塞がれた窓と相対する。


窓の、いや、防護壁の向こうにさえ、実のところ外の風景などはない。
が、しかし、例えば窓を開けるように、外の景色を確認する事は出来る。
窓を撫でる。
防護壁であったものがあたかもガラスのように透明になる。
そして、あたかもそのすぐ向こう側にあるように、外の風景が映し出される。


幽かな宇宙。
数週間前と同じようにも見える、ただただ広大であるだけの空間。
私はそれを見ても特に落胆はしなかった。


ただ、
この小さな空間に居ながらにして、
この大きな虚空に居ることに、
落ち着くでもなく、想いを馳せる気も起きず、
焦燥にも似た倦怠感がいつものようにやってくるだけだった。






と、言う感じで始めた後、






その美しい吊り目の女…いや、少女は言った。
「ゴブリンを知らないの?あんな野良なら何処の森にも居るはずよ?」
「ゴブ…リン?」
どこかで聞いた事のある言葉だと思った。
そう、どこかのエンジンパーツがそんな名前だったはずだ。
しかし、しかしだ。


「こんな化け物…いや、生き物だったなんて聞いてないぞ!」
「モンスターとしては至極低レベルだと思うけど…?」
私の独り言に、どこか勘違いをした少女が、訝しそうに答えた。


少女は続ける。
「まあ、いいわ。奴らの住処で帯剣もしてないし…」
そうだ。
少女は彼女の剣による華麗な白兵戦で、
「ゴブリン」=「奴ら」を屠ったのだった。
まあ、そうしなければ今頃私は奴らに撲殺でもされていたのだろうが。


「かといって、新種のゴブリンでもなさそうだし?」
「彼らとは全くの初対面だよ。まして同類項だなんて心外だ。」


「それに君とも初対面だ。」
「あら、ハーフエルフと会うのは初めて?」
うーん。会話が噛み合わない。



こんな感じでファンタジーに突入するのはどうか。
がいしゅつですか。