トラックを見送りながら、新人がつぶやいた。
「5年前の話とはいえ、まだ、バーチャルがリアルを超える時代じゃないんですかネエ」
ねえ、と、ベテランを振り返ると、
ベテランは眉根を寄せて、新人を見ていた。
「…そういや、お前、この手の仕事初めてだっけ?」
新人は頷いた。
「今度の、アイドルのツアーについて行くの楽しみだって言ってたの、お前だったよな?」
新人は、頷いた。
頷いて、かぶりを振った。
「ま…まさか…」
ベテランもため息をついた。
そして、強張った新人の笑顔を見て、苦く笑ってこう言ったのだ。
「まあ、要領は今回とおんなじだから、さ。」